の日のプレゼントをまだ買っておらず、お父さんは結局お酒よ、という母の言葉をぼんやりと思い出しつつも、家にいるときはいつも酒屋に行くのを忘れていた。
帰り、いつものスーパーに行く途中で酒屋を見つけたので、ようやく立ち寄った。
酒どころ九州にはなさそうな銘柄を適当に見繕って、そういえば家の料理酒がなくなり、みりんも底を尽きかけていたと、自分の分も選ぶ。何か上等な料理酒でも置いてあれば、と酒屋のおじちゃんに声をかけてみたら、私が発した「塩の入ってない料理酒」という言葉にいたく感激してくれた。別に安物の日本酒でもいいみたいで、鬼ころしでいいよ、板前さんなんかでも普通の日本酒使ってると薦めてくれた。そしてみりんの話までしてくれたので、あぁ、江戸時代なんかは普通にお酒として飲んでたんですよね、と言ったら尚一層喜んでくれた。
一時期有元葉子さんの料理本の影響で、上等の調味料を探すのにネットサーフィンしまくった結果というだけなのに。
私が手にしていたタカラの本みりんを、いいみりんだよ、と言ったおじちゃん。ぜひ友達が遊びに来たら飲ませてあげてみてね。こういうことを知っている人が居るなんて嬉しいなぁ。僕らは商売だから知ってるけど。
帰りがけの夕陽が燃えそうに真っ赤だった。でも綺麗だった。
夜ご飯を食べた後、そういえば、と早速開封して、氷をたくさん入れた中にみりんをとぷとぷ入れてみた。みりんの独特の甘味。後味のえぐみの無さに、あぁこれは安かったけれどいいみりんだ、とおじちゃんが言ってくれたことを思い出した。