当時

より数十センチ大きくなった体にはとてもコンパクトな町に思える。思い出をなぞるように歩いて見たけれど、もう記憶はおぼろげで、変わった道や建物に、上手く辿りつけなかった。
大冒険に思えた一度か二度だけ行った沢はもしかしたらバイパスに潰されたのかしら?
昔は通学路だった道は建物の陰に隠れて形を変えて私道になったみたい。
地元のバス会社の建物は相変わらずでかなりの地区年数であることは外からも明らか。
坂道は忌々しいくらい。
かつて慣れ親しんだ町のはずだけど、どこか構えてしまうのはなぜだろう。
いつか自分が骨を埋めたいと思うような町は何処だろうと最近時折思うのだけれど、この町ではないのだろうななんて思う。
昭和の強い香りが今の私の中には歪な形で入ってくる。
ただ高台からの町の風景、その場所はかなりのお気に入りになった。もし今度来る機会があったら、ここでひたすら景色を見ながらぼーっと過ごしたい。
戻る日常が今の私には逆に安堵の場所なのかもしれない。